頭が弱すぎる話
タマ・チャンは驚くほど頭が弱い。
おっちょこちょいと言ってしまえばお茶目でキュートみがあってハッピーエンドなのだが犯すミスの度合がおっちょこちょいでは済まされないレベルである。
今日はコインランドリーで洗濯をしていたのをすっかり忘れていて約20時間放置してしまった。
タマ・チャンが洗濯物の存在を思い出したのは授業中で、その時の顔といったらザ・顔面蒼白だった。
その顔をムンクが描いていれば『叫び』に負けるとも劣らない名作が出来ていただろうと思うほどタマ・チャンの顔は絵画的であった。
しかし、真面目さが仇となり、タマ・チャンは引きつった笑顔でdiscussionに取り組まざるを得なかった。その瞬間、タマ・チャンは心ここに在らずを体現した女だった。
あと2時間授業を控えたタイミングでその事実と対面しタマ・チャンは焦りと仄かな恐怖しか抱くことが出来なかった。
なぜなら制服事件がフラッシュバックしたからだ。
タマ・チャンはバイト先の制服をコインランドリーで失くしている。[参照:最近の話]
結局あれ以来タマ・チャンの制服が見つかることは無かった。ただただ空しくマンションに遺失物のお知らせの貼り紙が残されただけだった。
授業に集中できないかと思いきや全然集中できたあたりタマ・チャンは順応性が高い。
家に帰ってすぐ確認したところ、幸いかな、複雑かな、何も盗まれていなかった。終わったままの状態で残っていた。治安が良すぎた。
タマ・チャンは静かにそれを洗濯し直した。
そしてこの事実は バイト先の制服>タマ・チャンの下着 ということをタマ・チャンに確信させた。
放置した時間は制服を洗濯していた時の方が圧倒的にアッアッ圧倒的に短かったのに。
いや、もしかしたら制服は盗まれていないのかもしれない。すべてはタマ・チャンが見た幻だったのかもしれない。
ファンタジー。
ちなみに洗濯物を運ぶ時、タマ・チャンは下着を落としていた。
洗濯物を運んでからまた出かけるまで、タマ・チャンのかあいい下着が玄関の前に落ちていた。
マンションの廊下に堂々と落ちていた。
どうか誰の目にもついていませんように、と願いながらタマ・チャンはそっと下着を拾った。