友達の大学にゲリラで行った話

 

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タマ・チャンの友達には友達がいない。

こう書くと彼女に怒られそうだが、大学で友達ができないと日々嘆いているのは事実だ。

 

今日はその友達を瀬戸さんと呼ぶことにする。

彼女は瀬戸康史葵わかなを足して2で割ってスパイスでタッキーを加えたような風貌だからだ。

恐ろしいほど安直な理由だということはさておき、今の説明で賢い読者の皆さんは分かったと思うが、瀬戸さんの顔は可愛い。

それだけでなく、フレンドリーかつ優しい。

多少のおっさん感は否めないが、一緒に過ごせば楽しい人物だということはタマ・チャンと同じ高校出身者の中では周知の事実だ。

だから、何故彼女に友達ができないのかはタマ・チャンには到底わからない。

おそらくタマ・チャンと瀬戸さんどっちが友達多そうですかと街頭アンケートを行ったら圧倒的得票差で瀬戸さんに軍配が上がる。そのアンケートでタマ・チャンに票を入れる人は相当な捻くれ者、もしくはタマ・チャンにアプローチを試みる変人だと思う。

 

瀬戸さんはふとした瞬間に友達がいないことを仄めかしてくるから余計切ないのだ。

「今何が欲しい?」と一般的なトークテーマで会話している途中に「友達かな」と大爆弾をぶっ込んでくるので切ない。

その後に訪れるのはそこはかとない気まずさと沈黙である。

 

だから、タマ・チャンは彼女の大学に行くことにした。幸いかな、タマ・チャンは他大学より先に夏休み真っ只中なのである。

と言っても彼女の大学に行く途中で心配になって連絡したため、中途半端ゲリラだった。心配性タマ・チャンが出てしまったことは反省している。

 

着いた時間はちょうど授業中だったのでお腹が空いたタマ・チャンは1人で学食に向かった。

その様子はまるで敵陣に1人で切り込む武将のように勇敢で、そして北村晴男弁護士のように冷静沈着だった。

 

そこで偶然にもタマ・チャンは同じく高校時代の友達に出会った。彼女は松井さんと名付ける。秀喜ではなく愛莉に似ているからだ。

ちなみに瀬戸さん松井さんタマ・チャンは同じ部活に所属していたのだが、それについては後日書こう。

 

カレーとうどんを平らげる可愛くない食べっぷりを披露した後、タマ・チャンは授業に向かった。

ちなみにカレーうどんかな?と思った読者の方、タマ・チャンにもカレーうどんの概念はあるので、カレーうどんを食べていたのならしっかりカレーうどんと表記する。タマ・チャンが食べたのはカレーとうどんだ。小うどんとかではない。しっかりと二食食べたのだ。

ちなみにタマ・チャンが何をどれぐらい食べようがこの話には一切関係ないし、今日のタマ・チャンはちなみすぎている。

 

その後は瀬戸さんと授業を受け、その次は松井さんと授業を受けた。おもしろかった。

 

 

危ない。話が長くなってきたせいで面倒くさくなって小学生の日記みたいな終わらせ方をする所だった。

 

瀬戸さんと受けた授業は正直内容が面白いとは言えなかった。

ただ最前列に座った以上、タマ・チャンは真剣に受けた。先生とバチバチに目が合ってたし向こうは絶対タマ・チャンを意識していたから、多分先生はタマ・チャンに一目惚れしたのだ。彼女は次回の授業で、タマ・チャンを見つけることができずやきもきし、自分がタマ・チャンとの再会を、タマ・チャンの眼差しを心待ちにしていたことに気づく。そしてその日は眠れない夜を過ごし、やっと自分の恋心を認識する。しかし悲しいことにその恋が叶うことは無い。「ごめんね、先生。タマ・チャンには好きな人がいるの。」その言葉が彼女の心を締め付けるのだ.......

 

 

危ない。文豪タマ・チャンが現れるところだった。

 

その次受けた松井さんとの授業は授業時間のほとんどがレポートを書く時間だった。タマ・チャンは受けたこともねえ授業のレポートを探り探り書き始めた。

 

その時、事件が起こった。

 

「あれ、1人多いな.......」

出席確認をしていた先生がタマ・チャンの一番近くの通路に立ち止まってそう呟いた。

 

バレている.......?タマ・チャンの心臓の鼓動が早まった。

想像して欲しい。貴方は今化け物から逃げるためにひっそり息を潜め隠れている。その化け物が近づいてくる。そしてこちらに気付いているかのような口の利き方をしている。恐怖でしかない。

※決して先生が化け物だと言っている訳では無い。タマ・チャンは他大学の先生にそんな無礼なことを言う子ではない。断じてそうではない。ちょっと眼光が鋭くて怖かったけれど、化け物だと思った訳では無い。

タマ・チャンは必死にレポートを書き続けた。私はこの大学の生徒である、そう主張するように。そして同時に化け物に愛嬌は通じないと絶望し、授業に潜ったことがバレた時に起こりうる最悪の事態を想定し始めていた。

 

先生が前に移動し始め、マイクを手に取った。

見つかった。これからこの化け物に捕って食われるのだ。その緊張を感じながらもタマ・チャンはレポートを書き続けた。

 

結論から言うと、出欠確認で申告された人数が実際に教室にいた人数よりも多かったらしい。

先生は生徒が誰かの出席を代わりに提出していることにご立腹だった。

しかしタマ・チャンは当然のことながら出席を出していないので、実際には2人足りていない。

タマ・チャンのおかげで1人欠席者が得をした。タマ・チャンは知らない内に人の役に立っていたのだ。

 

タマ・チャンはその事実を噛み締めながらそっと安堵した。そしてまたレポートに真摯に取り組んだ。

なかなかにスリリングな体験だった。

 

短い間だったが、タマ・チャンは瀬戸さんの大学を楽しんだ。

瀬戸さんの友達を1人や2人作って帰りたいところだったが、タマ・チャンも大してコミュニケーションに長けてるわけではないので次の機会に頑張ろうと決めた。

何よりも嬉しかったのは、瀬戸さんが友達と楽しそうに喋っているのを見かけたことである。紛うことなき親心がタマ・チャンの中に芽生えていた。

 

その後は瀬戸さん松井さんと夕飯を共にした。

そこでは、あの店員さんはヒャダイン片寄涼太のハーフだと言ったり(この時瀬戸さんはスパイスでゆりやんレトリィバァが隠れてると言い張って聞かなかった)、座席が隣だった方の横顔が瀬戸康史に似ているから瀬戸さんは友達になった方がいいと言ったり、大学で友達が出来ないなら男ウケだけ狙えばいいじゃないなどと楽しんだが、内容はまぁしょうもないので割愛する。

 

ちなみに松井さんとの授業で書いたレポートを後で読み返したら内容がクソだった。スポーツ選手のドーピングから話題が始まったのに何故か最後には子供たちの平和な未来を願うクソ構成だった。

何はともあれラブアンドピース。